会長挨拶

ご挨拶

永井英彰 会長 徳島県は戦前の徳島県民歌が伝えるように「忌部」の国でした。その忌部族は阿波地域を拓き、麻や榖を植え産業興しに尽力し、その麻布を染めることから阿波藍が生み出され、それはジャパンブルーとして日本を席巻し、代表的な徳島ブランドとなりました。また、阿波和紙など徳島の基盤産業や文化を生み出しました。さらにヤマト王権の成立に影響を与え、日本各地に衣食住の生活産業文化を伝播させたことも分かってきました。
 忌部族は、フロンティア・産業興し・共存共栄・平和・相互扶助などの世界的普遍性をもつ精神に依っていました。それは徳島県のお接待やおもてなし、板東俘虜収容所、賀川豊彦の友愛や平和の精神に受け継がれていったと考えられます。忌部精神は日本や世界が今後進むべき方向性を示唆しているといえるでしょう。また、私も調査に訪れましたが、忌部や阿波文化ルーツの一端は、ネパールより東に続く中国南部の雲南省や東南アジア方面の照葉樹林文化圏に求められ、そこから阿波晩茶や太布、麻織などの技術が神話とともに伝播したことも分かってきました。

 その忌部研究を深化させるために始められた10年に亘る剣山系の農文化調査は、当初はカヤ(ススキ)を施用する文化に着目することより始まりました。そして地道な研究と啓発活動が実を結び、2017年3月には、「にし阿波の傾斜地農業システム」として、農林水産省が創設した日本初の日本農業遺産に指定されたのです。さらには、国連食糧農業機関(FAO)が提唱する世界農業遺産(GIATH)の国内代表候補にも選ばれました。このことは、閉塞感が漂う徳島県民に大きな勇気と誇りを与えるものとなりました。

 剣山系の農業技術や思想は、世界各地に技術の移転ができ、貧困に苦しむ世界に貢献できるものです。また、その農文化の根底に流れる自然への畏敬、自然循環思想、共助思想、多様性の保障、原種や種の保護、ニホンミツバチが生息できる環境が維持されていることなどは、行き過ぎた近代化による弊害、危機的な地球環境問題を解決するヒントになることでしょう。

 本研究所は、研究だけを目的としません。忌部の精神、剣山系の思想を基盤に据え、多種多様な学識関係者、産業従事者・専門家などの人々が奉仕・学習・交流・活動することにより、新たな徳島の新観光・産業・教育・文化事業の創出と人材育成、さらに徳島-日本各地-世界との多地点・多極軸による歴史文化経済交流等により、徳島の地域創生、日本創生、ひいては世界平和に貢献する多種多様な研究やプロジェクトを展開するために設立するものです。この研究所の趣旨にぜひともご賛同、ご支援をいただき、2018年4月には発足に至りたいと考えています。ご協力のほどお願い申し上げます。

「忌部」文化研究所 設立協議会
会長 永井 英彰
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