令和元年(2019年) 6月 NO.7

日本忌部紀行 “忌部(INBE)を行く!”

忌部文化研究会 会長 林 博章

 会員の皆さまには「忌部」の足跡を楽しんでもらう目的で、“忌部を行く”を連載しています。阿波国(粟国)を拓き、日本各地の創生に活躍した阿波忌部の足跡を辿っていきます。中でも阿波忌部が麻を植えて拓いた故事にちなむ旧麻植郡(現在の吉野川市)の伝承地を紹介したいと思います。山川町編の第7回は「忌部の真立石」です。

忌部の真立石~忌部族のマツリに纏わる巨石記念物~

●場 所 - 吉野川市山川町忌部山

 「忌部神社」の元地跡となる黒岩磐座遺跡の入口より、さらに山道を50ほど登ると、左手(北側)に阿讃山脈が大きく眺める場所に2本の巨大な立石が祀られ、「忌部の真立石」と呼ばれている。高さは2本とも約2.5m、その内の1本は尖塔型で、これは忌部族の何らかのマツリに纏わる巨石信仰物(メンヒル)であると考えられる。日本で同様例は、鳥居龍蔵氏が昭和初期に認定した大分県別府市の「姫神メンヒル」や、同安心院(あじむ)町の「佐田の京石」、岐阜県恵那市の「鍋山メンヒル」などが挙げられ、日本を代表する巨石記念物となっている。この2本の立石の間は南北上にあり、その延長線上に阿波市市場町の城王山(標高630m)が聳えている。城王山は山容の美しさで阿波富士との別称をもち、山頂には「城王神社」が祀られている。忌部氏の伝承に彩られる吉野川市(旧麻植郡)や美馬市・つるぎ町には立石(メンヒル)を中心とする先史時代の祭祀文化が存在し、「忌部の真立石」もその一つであった。