令和2年(2020年) 4月 NO.15

日本忌部紀行 “忌部(INBE)を行く!”

忌部文化研究会 会長 林 博章

 会員の皆さまには「忌部」の足跡を楽しんでもらう目的で、“忌部を行く”を連載しています。阿波国(粟国)を拓き、日本各地の創生に活躍した阿波忌部の足跡を辿っていきます。中でも阿波忌部が麻を植えて拓いた故事にちなむ旧麻植郡(現在の吉野川市)の伝承地を紹介したいと思います。鴨島町編の5回目は、「麻宮」の別当寺「宝王院」です。

延命山「宝王院」~麻宮の別当寺~

●場 所 - 吉野川市鴨島町牛島1005-1

 「麻宮」に隣接して真言宗御室派の延命山「宝王院」がある。当寺は中世の史料に修験寺院として見られる願成寺の後身とされる。永正2年(1505年)6月10日の旦那売券には、「牛之嶋之願成寺」とあり、熊野先達の拠点になっていた。天文21年(1552年)11月7日の阿波国念行者修験道法度写にも「牛嶋願成寺」とあり、願成寺の山伏は念行者と称した阿波国の有力山伏集団に属し、大峰山や伊勢・紀伊熊野・山城愛宕山、高越山といった阿波国内外の霊場への引導・代参等を行う先達であった。『寛保改神社帳』によれば、牛島八幡宮(麻宮)の別当寺となっていた。郡村誌によれば、元和3年(1617年)に憲照によって中興されたと伝わっている。