令和3年(2021年) 1月 NO.30

日本忌部紀行 “忌部(INBE)を行く!”

忌部文化研究会 会長 林 博章

 会員の皆さまには「忌部」の足跡を楽しんでもらう目的で、“忌部を行く”を連載しています。阿波国(粟国)を拓き、日本各地の開拓に活躍した阿波忌部の足跡を辿っていきます。中でも阿波忌部が麻を植えて拓いた故事にちなむ旧麻植郡(現在の吉野川市)の伝承地や史跡を紹介したいと思います。鴨島町編の13回目は、麻植の神塚です。

八坂神社 ~欅の御神木と盃状穴石板~

●場 所 - 吉野川市鴨島町牛島
●祭 神 - 素戔嗚命


 JR麻植塚駅のすぐ北には、「八坂神社」が祀られている。境内に聳え立つケヤキの御神木が荘厳な雰囲気を映し出している。また、境内から古墳の石材に使用された石棺の破片と推定される石板が残され、その表面に盃状穴を発見し、本殿裏に由緒ある文化財として丁重に祀った。古代に何らかの祭祀や呪術のため穿たれたとされる盃状穴は、山口市の「神田山古墳」の石棺で梅光女学院大学の国分直一教授が初めて見出した。その意味は、概ね子孫繁栄・豊饒祈願・葬送儀礼と考えられている。同様の盃状穴は山川町の境谷古墳の天上石にも穿かれている。その歴史的意義の解明が待たれる。