令和2年(2020年) 4月 NO.19

日本忌部紀行 “忌部(INBE)を行く!”

忌部文化研究会 会長 林 博章

 会員の皆さまには「忌部」の足跡を楽しんでもらう目的で、“忌部を行く”を連載しています。阿波国(粟国)を拓き、日本各地の創生に活躍した阿波忌部の足跡を辿っていきます。中でも阿波忌部が麻を植えて拓いた故事にちなむ旧麻植郡(現在の吉野川市)の伝承地を紹介したいと思います。鴨島町編の6回目は、「麻塚神社」です。

「麻塚神社」~天太玉命の后神を祀る小社~

●場 所 - 吉野川市鴨島町牛島字原
●祭 神 - 天比理刀咩命

 飯尾川の北岸、「麻宮」(牛島八幡神社)の南、JR徳島本線の線路南の道路沿いには、簡素な社殿ながら「麻塚(おづか)神社」が祀られている。南には、向麻山の丘陵を拝することができる。『鴨島町誌』によれば、小社の一つとして「麻塚神社」が載せられ、祭神は天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと)とある。この天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと)は、忌部の祖神・天太玉命(あめのふとだまのみこと)の后神、天日鷲命(あめのひわしのみこと)の兄弟神にあたる。
 阿波忌部の一部は、天富命(あめのとみのみこと)に率いられ房総半島に渡来し、千葉県の房総半島南部を「安房」(阿波)と故地にちなみ名付けた。館山市洲崎には、天比理刀咩命(あめのひりとめのみこと)を主祭神とする式内大社「洲崎(すのさき)神社」、洲宮に「洲宮(すのみや)神社」(比定社)の2社が祀られている。「洲崎神社」の宮司口伝によると、阿波忌部が洲崎に上陸後、故地に似たる地形を探し「洲宮(すのみや)神社」を創建したと云う。その故地とは、かつて吉野川本流であった飯尾川流域、向麻山(こうのやま)周辺域であったかもしれない。